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発表『淡路島アート議定書!』

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    淡路島アート議定書!



    はじめに

    5年間のアートNPOフォーラムの議論のひとつの帰結として、『淡路島アート議定書!』をまとめました。この議定書が、社会変革のうねりを促す芸術文化の基盤整備の指針となり、広く社会にポジティブな波紋を引き起こすことを期待しています。

     今日の日本は、社会の課題解決のため必要とするサービスを自らの手で作り出し提供していく社会へと、変貌を遂げつつあります。その際、市民ひとりひとりの自発性に基づき、市民が相互に連携する方法として、NPOによる活動への期待が高まり、注目されるようになってきました。そして、NPOが、行政組織や民間企業との協働を通じて、「新しい公共」を実現するための多彩なサービスを各地で展開しています。
     こうした新たな市民社会(Civil Society)を形成する動きが盛んになる中、アートNPOのネットワークを形成、発展させるべく、これまでに6回の『全国アートNPOフォーラム』を開催してきました。神戸、札幌、前橋、青森、別府、大阪等、全国各地で繰り広げられた議論を通じて、いくつかの点を確認しました。

    1.芸術文化の取り組みにおいても市民自らが主役であること
    2.社会における芸術文化の役割をとらえ直す必要があること
    3.豊かな市民社会の創出に芸術文化が不可欠であること
    4.「新しい公共」という社会変革の潮流においてアートNPOが大きな力を発揮できること

     2003年に535団体であったアートNPOは、2007年に既に2006団体を数えるまでになりました。しかし、このような量的な拡大のなかで、今後、アートNPOが多様な主体とどのような連携を図っていくのか、市民の代表としてアートNPOは何に取り組むのか、これらの問いに対して、アートNPOのあいだで共通の認識を形成していく必要があります。
    そのためには、社会変革のためのコミュニケーションやネットワーキングの仕組みをより充実させていかなければなりません。
     そもそもNPOは、それぞれの団体が実現を図るべきミッションを掲げて活動しています。それと同時に、NPOには、それぞれのミッションを達成する上で必要な制度づくり、社会の各層に対して活動の意義を説明し、賛同者、支援者を増やしていくこと、さらには基盤整備のための提案が求められています。
    とくに、芸術文化をとりまく社会的環境は、国や自治体の制度や地域の文化的構造に応じて変化すると同時に、両者は密接に結びつくものですが、加えて、アートNPOの活動の先駆性・ 先見性が、行政や企業のみならず市民にも、ただちに理解されない場合もありえるでしょう。
     そこで、全国アートNPOフォーラムin淡路島(2007年12月15日)では、これまでのアートNPOフォーラムを総括し、個々のアートNPOが掲げるミッションの底流に流れる意識を共有したうえで、アートNPOの活動現場における現状と今後の方向性に関する確認を行いました。それらの議論の内容を、以下『淡路島アート議定書!』としてまとめることとしました。フォーラムでの5年間の議論のひとつの帰結である「議定書」が、社会変革のうねりを促す芸術文化の基盤整備の指針となることを期待しています。
     それは、今後、地域や現場に即した活動を担うアートNPOが、「議定書」で確認された事柄を推進し、アートNPOどうしはもちろん、芸術文化の振興に携わる幅広い機関や当事者どうしで、到達すべき具体的な目標を定め、相互に目標を達成できるよう、さらなる協働が進められることを願っているためです。あわせて、この「議定書」の内容が、全国で活動するアートNPOが、地域における政策立案等を行う際の参考として活用いただけることを強く望んでいます。その結果、この「議定書」が、広く社会にポジティブな波紋を引き起こす素材となれば幸いです。



    1. 市民が主体的に芸術に参画する領域を拡大する

    本格的な市民社会が到来しつつある今こそ、芸術文化の価値、意味を見つめ直し、芸術文化の本来の意義を再構築するため、アートNPOは、市民一人ひとりが芸術を創造的に使いこなし、芸術文化の創造に主体的に参画できる仕組みづくりに取り組みます。

     近年各地で生み出され展開されてきたさまざまなアートプロジェクトを通じて、芸術は社会の課題解決と無縁でなく、「新しい公共」を実現する上でも大きな役割を果たすという認識が生み出され、その波動は徐々に社会へと浸透してきました。これからの社会において、その認識がさらに拡張されるには、市民が市民の視点から芸術文化を語り、芸術文化とは何かを捉え直し、市民が当事者となって主体的に芸術文化活動へ参画していくことが必要です。そのために、アートNPOは、市民ひとりひとりが芸術を創造的に使いこなしていくための仕組みづくりを担う必要があります。
     芸術文化はもともと社会の中に存在し、人々の生活の中に息づき、生活のリズムを産み出していました。地域のお祭りが象徴するように、人々は芸術文化を自在に楽しみ、味わっていました。それらの機会において、人々は日常の生活を超えた「ハレ」の芸術に対して、時には敬意をはらい、時には畏敬の念すらもつこともありました。このように、芸術は人々の生活の中に重要な位置を占めていたものの、近代以降、外来の芸術が高尚なものとして輸入され、生活に根ざした伝来の芸術文化に対して特別の存在として扱われてきました。これが現代の日本において、芸術と市民との間に大きな溝が生まれた要因となっています。
     本格的な市民社会が到来しつつある今こそ、芸術文化の価値、意味を見つめ直し、芸術文化が本来持っていた意義を再構築していく好機です。そこで、市民が芸術を生活の中に生かす能力を再び高めることを提唱します。そのために、改めて社会における「芸術家(アーティスト)と市民の関係」、またアートNPOにおける「芸術家(アーティスト)と社会とのつなぎ手の役割」などの議論を重ね、その成果を踏まえて、仕組みづくりに生かしていく必要があります。市民にとって、芸術文化とは、専門家の模倣としての表現活動ではなく、市民の新たな表現活動であるという認識が広がるためには、市民と芸術家が協働して新たな表現手法を創出していく必要もあります。このような社会を生み出すために、アートNPOは市民が芸術文化の創造に主体的に参画できる仕組みづくりに取り組みます。



    2. 芸術文化こそ地域創造の切り札に

    アートNPOは、人々のつぶやきを拾い、気づかざる価値に光を当てることによって、地域を変える創造力を喚起し、それを育んでいきます。そのため、企業や行政との連携・パートナーシップを強化し、芸術家(アーティスト)が地域創造の起爆剤や触媒の役割を果たすよう、多様な分野の組織や機関、そして市民との連携に取り組みます。

     都市への人口流出による地域の過疎化、高齢化による自治組織の活動停滞などが深刻化する中、地域再生のために産業振興、観光振興に取り組む地域が増えています。その際、他の土地にはない魅力づくりに向けて、地域の資源を発掘し、価値を創造し、地域ブランドを確立することが必須となります。すでに、地域ブランド化に関する取り組みが各地で報告されるようになってきましたが、域外から根づいた市民が積極的に関与することで成功を導く事例もあれば、経済的な発展だけを追求する事例も見られます。それらの事例が示しているのは、地域ブランドを確立するためには、非営利活動による高い公益性に基づいた取り組みが不可欠だということです。
     しかし、地域創造には、高い公益性だけでなく、関わる全ての人々に創造的な発想や考え方、仕事への創造的なアプローチが必要です。仕事への創造的なアプローチを通して、社会的・文化的背景や立場の異なる市民どうしの豊かな関係が生まれ、地域に新しい価値がもたらされます。このように捉えてみると、アートNPOの活動は、創造性を発揮する芸術家(アーティスト)と地域との「つなぎ手」となることによって、地域の課題に対処の方法を見出し、人々の暮らしに埋め込まれている問題点を明らかにし、人々が日常生活において忘れていたものに気づくきっかけをもたらす取り組みであるといえます。事実、アートNPOは、市民の自立性や社会の多様性を尊重し、議論を尽くしながら、ここ数年で着実に力をつけ、さまざまな分野で成果を積み重ねています。つまり、アートNPOとは、人々のつぶやきを拾い、気づかざる価値に光を当てていくことによって、地域を変える創造力を喚起し、これを育む当事者なのです。
     そもそも、社会の多様な課題に対処する上で、芸術文化の果たす役割は小さくありません。また、芸術文化は、地域再生、地域コミュニティの再生はもとより、教育、環境、福祉、医療、さらには防災といった市民生活の全てに深く関わっており、これらの分野での活躍も拡大しています。同時に、アートNPOは、地域において、さらに活動領域を広げていくことで、社会が芸術の効用を充分に得ることができるようになります。例えば、アートNPOは、近代産業遺産や既存施設の活用において、さまざまな芸術文化の享受者間のつなぎ手となる「中間支援組織」としての役割を担い始めています。以上のことから、アートNPOは、企業や行政との連携・パートナーシップが強化されることで、芸術家(アーティスト)が地域創造の起爆剤や触媒の役割を果たすよう、多様な分野の組織や機関、そして市民との連携に取り組みます。



    3. アートNPOの経営強化と、芸術文化支援制度の効果的な改革を

    アートNPOは、新しい公共の一員として芸術文化政策を担うため、自ら経営面での強化策を検討するとともに、政府・自治体には、アートNPOを公共的な活動の担い手であると認識し、中長期の展望に立った、効果的な振興策、支援策への転換を強く望みます。

     アートNPOは、これまで相当の実績を積み重ねてきており、その役割について期待も高まってきています。しかしながら、その経営基盤はいまだ脆弱です。アートNPOが芸術文化を通して多様で豊かな市民社会を創出し、新しい公共の一員として芸術文化政策を担うためには、その運営基盤を強化し、幅広い事業が展開できるよう、経営的な課題を解決する必要があります。
     そこで、アートNPOは、自らが事業体であるという観点に立ち、経営面での強化策を再検討することが求められます。例えば、アートNPOのマネジメント能力を高めるためには、経営のノウハウを蓄積する企業の実践に学び、必要に応じて適切な人材の起用や人事交流を行うことが妥当でしょう。あわせて、アートNPOが新しい公共を担うという共通認識だけでなく、新しい公共という認識を広めるとともに、新公益法人並の寄付金に関する税制優遇や法人税の免除など、迅速な税制の改正が不可欠です。
     一方、中間支援組織として活動するアートNPOは、芸術文化振興の現場を熟知しており、その視点から検証した場合、今日の芸術文化の振興策や支援策が、現場に即応せず、十分な効果を上げていないのではないかという、大きな疑問を抱いています。加えて、芸術文化の振興や支援は、効率優先の短期的な方策に止まらず、未来の効果を見据え、社会的な投資としての観点から継続的になされることが重要です。したがって、アートNPO自らも、経営に必要な人材を育成し、これから10年、20年先といった中長期的な視点に基づいた経営基盤の強化策が求められています。同時に、特に政府・自治体には、アートNPOを公共的な活動の担い手であると認識し、その経費を応分に負担するなど中長期の展望に立った、効果的な振興策、支援策への転換を強く望みます。



    4. アートNPOのネットワークが果たす役割

    アートNPOは、芸術文化の環境の基盤整備が進むよう、アートNPO相互のネットワークを強化し、これまで以上に情報交換と協働を進めていきます。まず、この「議定書」が生まれた淡路島でのアートNPO活動の市民レベルでの支援と協働に取り組みます。

     以上、この「議定書」では、アートは市民の生活になくてはならないものであること、アートNPOは活動拠点を置く地域に果たすべき役割があること、アート分野も含めてNPOで活動する人々を社会が活かす新しい価値観を構築する必要があること、これらを確認しました。今後、アートNPOが上記の事柄を共通認識として活動に取り組む際には、何よりも各団体の情報発信と人材の相互交流が重要となります。
     そこで、アートNPOは、芸術文化の環境の基盤整備が進むよう、アートNPO相互のネットワークを強化し、これまで以上に情報交換と協働を進めていきます。まずは、この「議定書」が生まれた淡路島でのアートNPO活動の市民レベルでの支援、すなわちアートNPOどうしの協働に取り組んでいきます。そして、上記の事柄を推進するために今後下記の取り組みをおこないます。

    ●アートNPOが自立するための経済的なシステムを開発し、提案します。
    ●アートNPOが地域で活動していくための、アート振興の手法と地域資源の調査方法を開発し、提案します。
    ●マネジメントやプロデュースに関するレクチャー等を開催し、アートNPOのプロデュース能力を高めます。
    ●各方面に芸術の現代における意義、そしてアートNPOの重要性を訴え続けると共に、アートNPOのアドボカシー能力を高めることを目的とした広報やアーカイブに関する手法開発と提案をおこないます。
    ●全国アートNPOフォーラムを開催し、全国のアートNPOの議論の場を創出し、ネットワーク促進をはかります。




    全国アートNPOフォーラムin淡路島
    2007年12月15日