表現の糧学校 開催概要

  • 表現の糧学校

    表現の糧学校 〜思考のヒフ感覚


    会 場    アサヒ・アートスクエア
           (東京都墨田区吾妻橋1-23-1 4F)
    アクセス   東京メトロ銀座線「浅草駅」4番出口より徒歩5分
           都営地下鉄浅草線「浅草駅」A5番出口より
           徒歩10分
           都営地下鉄浅草線「本所吾妻橋駅」A3出口より
           徒歩6分
           東武線「浅草駅」より徒歩6分
    日 程    前期:12月5日(水)・6日(木)・7日(金)
           後期:12月26日(水)・27日(木)・28日(金)
    時 間    各回とも 19:00〜21:00
    料 金    1講座|一般1,500円、学生・会員1,000円
           3講座|一般4,200円、学生・会員2,700円
           全通し|一般8,000円、学生・会員5,000円
           ●学生は、当日学生証の提示が必要です。
           ●経済的に支払い困難な方はご相談下さい。
           ●料金は当日お支払い下さい。
           ●3講座・全通し料金は、初回時にお支払い下さい。
           ●原則として払い戻しには応じかねます。
           ●やむを得ない事由により変更になる場合があります。
    定 員    50名[要事前予約]
    予約先    アサヒ・アートスクエアまで、
           氏名、電話番号またはメールアドレス、
           ご希望の講座を下記のアドレスまでお知らせ下さい。
           E-mail aas@arts-npo.org
           TEL 090-9118-5171
    チラシ     チラシダウンロード(PDF)


    主 旨
     アートプロデュースの現場では、実践的な作業のノウハウも必要になりますが、それと同じほど、現代社会の中でアートの可能性をいかにとらえているのか、またその可能性を社会のいかなる領域に、いかにして開いていこうとしているのか、そういった「基本姿勢」がきわめて重要になります。こうした基本姿勢が確立されていなければ、起こりうるさまざまな状況と向かい合い、自身の行為の必然性を、説得力をもって表現できなくなるからです。
     表現の糧学校は、アートプロデュースを実践する前に、表現について考えるための学校です。
     前期は、《学ぶ講座》として「ジェンダー」「資本制」「公共性」といった現代社会に言及するうえで有効な三つの概念を学び、後期の《考える講座》では、芸術/アートの現場で社会と向き合っている方々をお招きし、一緒に考察を深めていきます。

    校長挨拶
     私はここで、ちょっと立ち止まって、表現の力について考えてみたいと思っています。太古の壁画や宗教上の聖典から昨今の現代美術や工業デザインに至るまで、この世に生まれ出で、いまも日々生まれ続ける無数の表現によって、これまで世界は大きく変化してきました。表現が世の中に出て、多くの人々の目に触れるとき、良くも悪くも世の中は変わります。そして、芸術/アートは、そのような表現活動のまさに最先端であり、壮大な実験であり、さまざまな可能性が探られる現場です。そこには、これからの社会を考え、変えるための、無数の可能性がひらかれているはずです。
     全体化してゆく今日の世界には、格差や分断、そしてそれらが引き起こす深刻な人間不信が充溢しています。この混迷の中で、芸術/アート、表現の最先端にいる人々の「責任」はこれまでになく高まってきている。私はそう考えています。現在、表現について考えると言うことは、社会の諸問題について考えると言うことを同時に意味するでしょう。換言すれば、表現が社会と距離をおくとき、それはこの世界の現状を「肯定する」ことを意味せざるを得ないのです。
     いまこそ学びが必要ではないでしょうか。
     私も含め、表現に携わる人々が、その「責任」を果たすために、いまもっとも求められていることは社会や世界について学び、考え、そして日々実践することではないでしょうか。
     『表現の糧学校〜思考のヒフ感覚〜』では、そのために三つのキーワードを用意しました。「ジェンダー」「資本制」「公共性」です。しっかりと学び、議論し、日々の実践をエンパワーメントするような学校を、今年も開催したいと考えています。

    学校長 山田創平


    講座内容
    《前期|学ぶ講座》
    現在の社会について言及するうえで有効な、三つの概念 「ジェンダー」「資本制」「公共性」

    第一講「公共性」
    講師=五野井 郁夫
    日時=2012年12月5日(水) 午後7時から午後9時

    内容=私たちを覆う制度やシステムが巨大であればあるほど、私たちはこれから先どのように生き、これからの社会をどのように構想すべきなのか、途方に暮れてしまいます。ひろがる格差や、すすまぬ富の再分配。議会は社会のごく一部の人々の利益のみを守ろうとしているかのようです。教育やエネルギー行政はその問題の核心さえ見えず、市民は闇の中で、巨大な社会の流れに身を任せるしかないかのようです。そして気付くと人々は、ますますばらばらで孤独になっていきます。そのような時こそ原点に返って、今隣にいるその人とどの様な関係をつくるべきなのかを考えるべきなのかもしれません。これからの人間関係を考え、これからの社会の可能性を考えるために、本講義では公共性という概念の基礎とその可能性について具体的に考えます。

    五野井 郁夫(ごのい いくお)
    高千穂大学経営学部准教授、国際基督教大学社会科学研究所研究員。1979年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専攻は政治学・国際関係論。世界中のフェスやパーティ、現代美術の国際展覧会、そしてストリートでの民主主義と公共性をめぐる芸術表現が現行秩序の変更に与える影響を研究。立教大学法学部助教を経て2012年より現職。著作に『デモとは何か−変貌する直接民主主義』(NHK出版)など。


    第二講「ジェンダー」
    講師=竹田恵子、山田創平
    日時=2012年12月6日(木) 午後7時から午後9時
    内容=グローバル化、格差や貧困、戦争や紛争、差別やヘイトクライム…。世界を覆うそれら諸問題は資本制と深い関わりを持っています。そしてその資本制を効率的に機能させるための社会システムとしてジェンダー(社会・文化的な性のありよう)があります。ジェンダーは資本制、民主制、公共性といった現代社会の諸システムについて学ぶとき前提となる概念です。むしろこう言った方が良いかもしれません。ジェンダーについての検討無しに、現代社会の諸システムを理解する事はできないのです。しかしながら学問としての「ジェンダー論」は社会の中で決して広く学ばれているとは言えない現状があります。本講義では以上の問題意識に立ち、まずジェンダーについて基礎から学びます。

    竹田恵子(たけだ けいこ)
    立教大学兼任講師(身体人類学)、NPO法人アートNPOリンク理事。他論文に「1990年代日本におけるHIV/エイズをめぐる対抗クレイムのレトリック分析−古橋悌二の言説を中心に」『年報社会学論集第24号』等。

    山田創平(やまだ そうへい)
    京都精華大学共通教育センター導入教育部門長・人文学部専任講師。1974年生まれ。名古屋大学大学院修了。文学博士。専門は地域研究。ブレーカープロジェクト、東山アーティスツプレイスメントサービス実行委員、NPO法人アートNPOリンク理事、AAF選考委員。著書に『ミルフィユ04 今日のつくり方』(共著・赤々舎、2012)など。

    第三講「資本制」
    講師=渡邊 太
    日時=2012年12月7日(金) 午後7時から午後9時
    内容=資本制や資本システムは、すでに私たちの生活領域を完全に覆っており、そこから逃れることは不可能であるようにも思えます。デイヴィッド・ハーヴェイは「かつて自由は政治的自由を意味していたが、新自由主義の世界では、自由は市場と貿易の自由を意味する」と語りました。市場と貿易の自由の結果、ごく一部の金 持ちは際限もなく金持ちになり、大多数の貧しい者はますます貧しくなるでしょう。そのような社会で、貧者はその生存そのものが危機に直面しかねません。つまり新自由主義的な自由は、その自由の名の下に大多数の人々の生存の自由を奪っているのです。私たちが生きる社会はすでにそのような段階に立ち至っていま す。本講義では、マルクスから新自由主義に至る資本制の基礎をふまえ、これからの社会を生きる私たちが、どのようにその巨大なシステムと対峙すればよいのかを考えます。

    渡邊 太(わたなべ ふとし)
    専門は文化社会学・宗教社会学。大阪国際大学講師。NPO法人地域文化に関する情報とプロジェクト、NPO法人日本スローワーク協会、国際脱落者組合(International NEET Union)にも関わる。文化の実験を通じた共同性の構築、社会運動のネットワーク、人が生活するなかで生まれるねじれとよじれに関心をもつ。著書に『愛とユーモアの社会運動論』(北大路書房、2012)、『聖地再訪生駒の神々』(共著、創元社、2012)、『カルトとスピリチュアリティ』(共著、ミネルヴァ書房、2009)など。



    ■《後期|考える講座》
    ダイアログ | 芸術/アートの現場から三つの概念を俯瞰する

    第四講「アートにみる家父長制」
    対談=ブブ・ド・ラ・マドレーヌ × 芹沢高志
    日程=2012年12月26日(水) 午後7時から午後9時
    内容=アートプロデュースとはなんとも矛盾した言葉です。おそらく「アート」とは、人類のやむにやまれぬ思いの表れであるという意味で個人的なものであると言えるでしょう。一方で「プロデュース」とはそれら個人的な物事を市場に位置づけ、社会化し、家父長的に組織する作業ですから、「アートプロデュース」とは実のところ方向性の異なる二つの言葉が合わさった妙な表現であると言えます。アートに偏重すれば社会と距離ができ、プロデュースに偏重すれば資本の論理に回収され 表現は訴求力のないものになりかねません。昨今多用されるアートプロデュースという言葉には、そのような矛盾に対する自省や思考がどれほどあるでしょうか。原点に立ち返って考えます。

    ブブ・ド・ラ・マドレーヌ
    1961年大阪市生まれ。現代美術作家。国内外のアーティストとの共同制作多数。HIV/エイズやセックスワークに関するコミュニティ・ソーシャルワークにも携わる。2012年秋に都市社会学者の山田創平らとのユニットによる新作「水図」を別府にて発表。京都造形芸術大学ASP学科非常勤講師。

    芹沢高志(せりざわ たかし)
    1951年生東京生まれ。1989年、P3 art and environmentを設立。以後、現代美術、環境計画を中心に、数多くのプロジェクトを展開している。アサヒ・アート・フェスティバル事務局長。「デメーテル」(2002) 総合ディレクター。「横浜トリエンナーレ2005」キュレーター。「混浴温泉世界」(2009、2012)総合ディレクター。


    第五講「アートと資本制」
    対談=イルコモンズ/小田マサノリ × 佐藤知久
    日時=2012年12月27日(木) 午後7時から午後9時
    内容=優れた表現とは、それがわかりやすい形であるかないかに関わらず、原理的に社会の規範を逸脱せざるを得ません。この逸脱はあるときはまさにその「他との違い」それ自体により資本市場で富を生み、またあるときには「社会の規範から逸脱する」がゆえに抑圧され無視されます。アーティストとはその双方の領域を絶妙なバランスで行き交う人のことかもしれません。資本主義はアートや表現にとって、可能性を与え、同時に可能性を奪う、しかしながらそこから立ち去ることはできない「危険な隣人」なのかもしれません。資本主義社会におけるアートの可能性、アーティストの役割と責任について考えます。

    イルコモンズ/小田マサノリ(おだ まさのり)
    1966年福岡生まれ。現代美術家、文化人類学者、メディア・アクティヴィスト、一橋大学大学院社会学研究課博士課程単位取得退学、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所特任研究員、中央大学兼任講師。
    最近の活動:アトミックサイト、怒りのドラムデモ、首都圏反原発連合

    佐藤知久(さとう ともひさ)
    京都文教大学総合社会学部准教授。1967年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程退学。博士(人間・環境学)。文化人類学を専攻。Social Kitchen Working Group参加中。論文に「社会運動と時間 アクトアップにおけるエイズアクティビズムの生成と衰退」(西井凉子編『時間の人類学』世界思想社、2011)他。

    第六講「アートと公共性」
    対談=砂連尾 理 × 照屋勇賢
    日時=2012年12月28日(金) 午後7時から午後9時
    内容=家父長制や資本制といった社会を構成する権力構造と、アーティストやアートプロデュースの現場はどのような関係を結んでゆけるのでしょうか。表現によって権力に異議申し立てを試みる営為はそもそもアートなのでしょうか。また逆に社会問題や権力に対して何らアクションを起こさないアートはすでにその存在意義を失っているのでしょうか。アートは「個人の思い」を出発点にして実現が試みられる表現様式です。しかし、その表現を誰かが目にし、耳にし、触れた瞬間から、その表現ははからずも社会の中に位置づけられ、社会を変えてゆく可能性を持ちます。アートと社会との関係、別の言い方をすれば表現が社会を変えるということ、表現が新しい市民社会を構想するということの今日的意味について考えます。

    砂連尾 理(じゃれお おさむ)
    1965年大阪市生まれ。振付家/ダ ンサー。舞台活動だけでなく、障がいを持つ人や老いた人、臨床哲学者、インタラクティブメディア・アーティスト、ロボット工学者等とプロジェクトを行う。 現在、宮城県名取市閖上地区の避難所生活者の声を集め、アーカイブ化、舞台化する計画を進行中。立命館大学、神戸女学院大学非常勤講師。

    照屋勇賢(てるや ゆうけん)
    1973年沖縄生まれ、ニューヨーク在住。ニューヨークのスクール・オブ・ヴィジュアルアーツ修士課程修了。世界各地の展覧会に参加し、国内外で評価される。2002年オールドリッチ現代美術館にて新人賞受賞。2005年、ニューヨークのPS1にてGreater New York 2005や横浜トリエンナーレ等で注目を集める。2011年、モスクワビエンナーレ、2012年にはシドニービエンナーレに参加。

    主 催    NPO法人アートNPOリンク/アサヒ・アートスクエア